2008のあゆみ

 
 

人権啓発劇「2008年」

 

1999(平成11)年、秋祭りも終わったある日、美しい夕日を眺めながら、主人公和義は孫の晃一と昔話に花を咲かせていた。和義は、夕日には深い思いがあった。それは、小学生の頃、仕事帰りの母(チヨ)があの世では極楽浄土へ行けるようにと夕日に向かって拝んでいた姿であった。そんな夕日を二人で眺めながら、和義は、自分の生きてきた半生を孫の晃一に語り始める。
 戦後間もない1948(昭和23)年、和義は宇和島での差別事件を聞かされ、宇和島に行くことを誘われる。妻や幼子を残して宇和島に行くことに和義の心は揺れるが、娘の望(のぞみ)のために闘おうと、宇和島へ行くことを決意する。
宇和島にやってきた和義たちは、そこで部落解放全国委員会の山口賢次という人物に出会う。和義たちの血気盛んな気持ちをいさめるかのように山口は解放運動について説いていく。そして和義は、解放運動について教えてほしいと山口に頼むのであった。
 和義の家に戦友の民雄が訪ねて来ていた。民雄は戦地で片足を失った上に戦災で家族を失い絶望していた時、和義が生きる意味を教えてくれたことを母(チヨ)に語るのであった。その時宇和島から和義が戻り、民雄と再会する。宇和島で学んだことを民雄に話そうとする和義。それを聞いていた母(チヨ)は、和義に自分にも宇和島のことを聞かせてくれと頼むのであった。
 宇和島から西条に帰った和義たちは、宇和島事件で学んだことを実践するために、積極的に部落を回った。共同作業所でみんなに説くが、反応は冷たかった。
しかし、何度も足を運ぶ中で理解者も増えてくる。そこには以前とは違い自ら立ち上がり、だんじりを作ろうと必死で訴える母の姿があった。
 和義は夕日への思いを晃一に語り終えると、2008年が人間解放の完成年とした決意を晃一に伝える。2008年は、解放令が出されてちょうど5万日目に当たる年である。晃一はもっと和義の生き方、考え方を知りたいと望み、和義は若い時からずっと書いてきた日記「残日録」を渡し、晃一に思いを託すのであった。

1999年上演

 
 
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