2008のあゆみ

 
 

人権啓発劇「あなたへ・・・」

 

2000年秋、晃一の地域でもみんなの願いがこもった解放の証「だんじり」が組み立てられている。そんな中、のぞみは銀行員として偶然通りかかった幼なじみの太郎と再会する。しかも、のぞみの息子の晃一、太郎の息子の純も偶然同じ中学校に通う友達であった。
 2人の息子たちは、同和問題解決の次代を担う若者を育てようと設立された「友の会」に所属している。そこでは、自分たちの生活の中でのものの考え方、捉え方を見つめ直し、そこに潜む不合理、差別性に気づき、正していく行動力を身につけようと学習会が積み重ねられている。
 いよいよ祭りを数日後にひかえたある朝、晃一と純はいつものように朝のランニングに出かけた。そこで、偶然、晃一の町を中傷した差別ビラを拾う。家に持って帰り両親に相談しようとした純に対し、ビラを見つめたまま凍りついたように「こんなビラを家族には見せられない・・・。」と衝撃を受ける晃一。
 晃一の姿にとまどいながらも純は拾ったビラを家に持ち帰り、両親に相談した。当然、誠意をもって対処してくれるものと信じていた純に対し、太郎は、同和問題に自分たち家族が関わることから逃れるため、ビラの存在をなかったことにしようとする。
 父親のとった行動に失望し反発した純は、晃一の苦悩を訴える。幼なじみののぞみの息子が苦しんでいることを知った太郎は、この問題から逃れることはできないと気がつき、純を連れ晃一宅へと走る。ビラを前に自分の生い立ちや晃一への思い、そして更にはビラをまいた差別者の人間的な弱さにも思いをめぐらすのぞみ。太郎はのぞみに対して、自分のとった行動を悔い、ビラ事件を公に訴えることを決心する。
 太郎の手によってビラ事件は市同和教育協議会に報告され、問題が明るみになる。集会所でも、事件の報告会が開かれた。住民からの憤りや怒りの声が上がる中、ビラ事件を差別者の最後のあがき、断末魔の声と捉えようという古老の声に皆、差別解消への展望を見いだす。
 一方、市同和教育協議会では臨時総会が開かれ、ビラ事件の対応について話し合いがもたれた。しかし、会の進行は消極的でどこか他人事の域を出ない。そんな中、太郎はビラ事件と自分との関わりを自分の心に素直に語りかけるのであった。そこには、差別はいけないと分かっていながらうやむやにしようとした以前の太郎とは違い、一歩の行動を踏み出し、積極的にこの問題に関わろうとする力強い姿が見られるのだった。更に、太郎の踏み出した一歩に感銘を受けた参加者の一人が意を決し、自らの差別性をとつとつと語り始める。太郎の行動は確実に総会そのものを変えていきつつあった。
 総会後、市同和教育協議会の取組が進みつつあったある日の朝、のぞみと晃一、太郎と純が偶然道で出会う。ビラ事件を通して人間の醜さ、自分自身の醜さの克服を学んだ太郎は、のぞみや二人の息子たちと共に、「人間解放」を誓う。4人にさんさんと降り注ぐ見事な朝日は、まさに「人の世に熱あれ、人間に光あれ」と水平社宣言がうたう人間解放への輝きであった。

2000年12月10日日曜日

 
 
Made on a Mac

次へ >

< 前ヘ