2008のあゆみ

 
 
 
 

「祭り」

 

ある小地域懇談会の席上、司会者に促されて、澄夫(スーさん)は、30年前のみにくい自分の姿を語り始める。
 30年前の祭りの日、澄夫はかわせみ町の「だんじり」にさわろうとしたうちぬき町(同和地区)の少年孝を責めて突き飛ばす。その場を走り去った孝は家に帰っても元気がなく、夕食にも手をつけようとしない。何かを隠している様子の孝を家族は心配し問いつめるが、何も語ろうとしない。そこへ孝を心配した友人が訪ねてきて、その日の事件が明らかになった。一方澄夫も家に帰り、その日のできごとを妻に話す。妻千代子は夫をなだめるとともに、娘のお見合いが不調に終わったこと、その原因が弟の紀夫にあるらしいことを告げる。その後、このことを聞き、やけになった澄夫は交通事故に遭って病院に運ばれる。
 うちぬき町での自治会の定例会の場面。会も終わろうとしたとき、孝の母が「だんじりを作りませんか?」とポツリとつぶやく。その一言が、波紋を広げる。そして会場にいた出席者一人ひとりの積年の思いを吐露させる。「だんじり・・・・それは、みんなの解放の願い。」やがて、「だんじり」を作り上げることが解放への思いと重なっていく。
 入院していた澄夫は、病院でのリハビリ中に、同じ病院に入院している平造(孝少年の祖父)と出会い、旧知の仲となる。
ある日、二人で世間話に花を咲かせていたところへ,直人(かわせみ町の青年団長)が祭りの報告を兼ねて、紀夫、淑子(在日朝鮮人)夫婦をつれて見舞いに来る。紀夫夫婦を追い返す澄夫であったが、紀夫夫婦は自分たち自身が持つ差別心に苦しめられてきたことを訴えかける。その話を一緒に聞いていた平造は、澄夫に世間体で差別することの不合理性を語りかける。その直後、孝少年が祖父平造の見舞いに訪れ、平造がうちぬき町の人であることに気付かされる。そこで澄夫は、今まで自分を苦しめていたものが自分自身の持つ差別心であることに気付く。
 ここまでの澄夫の体験談を聞いた小地域懇談会参加者は、小地域懇談会が自分自身の差別性との対峙の場であるということに気付く。さらに、差別解消の場でもあるということを再認識する話し合いがもたれた。
 澄夫は、この小地域懇談会の締めくくりに孝の町の「だんじり」が初めてできた当時の祭りの日の様子を語り始める。
 解放への熱い思いを込めて「だんじり」が今動く・・・・

2006年12月1日金曜日

 
 
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