理事長あいさつ

 
 

  2023年は、愛媛水平社創立 100 年、そして全国水平社創立 101 年目、その記念すべ

き年でした。プロジェクト2008も、コロナ禍をかいくぐり、約 6 年ぶりの人権啓発劇 の上演に向けて2022年より準備を行うともに、水平社に託した1世紀前の先人たちの 悲願の思いを、今回の人権啓発劇「つなぐ」に込めるべく、会員皆で総力を上げ創り上げ ていきました。8月27日の開演当日、会場の西条市総合文化会館大ホールは、満席とな りました。オープニングでは、高松市の国立療養所大島青松園より松本常二さんが応援に かけつけてくださり、温かいメッセージをいただきました。さらに、鳥取県大山町からは、 20年近く交流のある劇団「すだち」の皆様、また、愛媛県各地からも多くの参加者を得 ることができました。

さて、今回の人権啓発劇のテーマは、1922(大正11)年3月3日、京都岡崎公会 堂にて、高らかに謳われた水平社宣言が、今の私たちに何を問いかけているのか、そして 次代の人々に何をつなげるかをコンセプトとして創作をしました。特に「人間は尊敬すべ きもの」という言葉に焦点を当て、「あたかも己に惚れるが如きというもの」を劇中の登場 人物と一緒に考えることができました。また、私たちが17年間、大島青松園との学習交 流で学び続けてきたハンセン病問題と部落問題との共通性を明らかにし、会場にいる参加 者の皆様とともに、共有することができたと確信しています。エンディングのスタッフ・ キャストによる全国水平社宣言の群読もまた圧巻でした。6年ぶりの上演ができたこと、 また参加者の皆様からの多くの賛辞をいただいたことはプロジェクトのこれからの活動に とって大きな力となったことに間違いはありません。

ただ、今回の上演を通して、課題も見つかりました。私たちの活動は、劇を上演するこ とが全てではないということです。私たちがめざしてきたことは、劇作りを通して、西条 市で起こった差別事象を取り上げ、差別の現実に学ぶこと。そして、被差別の立場に立つ 人々の願いや体験してきたことを聞き取り、差別解消への熱い思いをシナリオにしたため ること。そのプロセスの中で、自分の中にある差別心と対峙し、それを払拭していくこと を再認識しなければならないと考えます。そして、その姿をそれぞれの職場で、地域で地 道に伝えていくことを忘れてはなりません。

さて、2025年に予定されています次回人権啓発劇への新たな取組は、もう始まってい ます。今日がその出発の日です。課題を胸に、学びを休むことなく続けていくことを会員 の皆様と改めて確認していきたいと考えます。

                                   2024年4月

 


NPO法人プロジェクト2008     

           理事長  永井 克征

理事長挨拶